2011年12月11日日曜日
one year
退院して1年が経った。
脳卒中をやった患者は後遺症の程度によってリハビリのやり方は十人十色だけど、多くの人は理学療法でまずは何とか歩けるようにする。それが出来るようになったら何度か外泊をして、「家へ戻っても何とかやっていけそうだな」という手応えを得てから退院する。
私の場合、最初の外泊で自分が想像していたより歩けない現実にショックを受け、「これは病院でのんびりリハビリしてるよりも家に帰って自分でリハビリした方が良いに違いない!」と勝手に判断し、主治医にお願いして半ば強引に退院させてもらった(苦笑)。
SLEと多発性筋炎という厄介な病気を持っていた為に、私は他の多くの脳卒中患者のように積極的に歩くリハビリをさせてもらえなかった。
リハビリ時間の大半は麻痺して強ばった左半身の筋肉をほぐす事に割かれ、肝心の歩行訓練は毎日15分程度。退院日までリハビリの時間以外は車椅子で過ごしていた。
だから威勢よく退院したものの、足元のおぼつかない脚でトイレへ行くだけでも一苦労!数週間は平均台を渡る時のように両手(と言っても麻痺のある左手はあまり上がらない)でバランスをとり、時々壁や家具を支えにして移動していた。
脚はそんな状態だったけど左手の指先は割と動いたので、彼の助けを借りながら料理をしたり、パソコンやゲーム機をいじる事は出来た。これはすごく嬉しかった。
毎日の生活の中で麻痺した左半身を動かす事は非常に良いリハビリになった。
常に麻痺した左半身のどこをどう動かすのかを意識しながら体を動かす。左手を忘れずに使うよう注意した(意識が離れると利き手だけで何とか済ましてしまう)。
外出時には店や銀行などの大きなガラスに映る自分の全身を見て変な歩き方をしていないか、体の左右差が出ていないかチェックする(我が家には姿見がないので)。
周りの人の動き、歩き方を観察するのも入院時からの癖になった。どうやって歩くのか、意識しながら歩くのって本当難しい。今でもそう感じる。
退院して1年が経った今になって、「あぁ、リハビリの先生にこんな事を訊きたいなぁ」と思うことが度々ある。運動音痴の上にヒトの体の動きというものがよく分っていないので、どうすれば余計な力を入れずにもっと楽に歩けるようになるのかアドバイスを貰いたい。
それでも早々に退院させてもらって良かったと感じている。
病院での限られたリハビリより日々の暮らしの中で実践的に体を動かす事に勝るリハビリはないと思う。それに家だと看護師や周りの患者さんへの気遣いも要らないし、何の制約もないので焦らず自分のペースでリハビリが出来るってのが一番のメリットかも。
先日、「壊れた脳 生存する知」という本を読んで自分自信の体験を思い出し、ここ数ヶ月はリハビリに殆ど時間を割かなくなっていた事を反省した。
体は随分と動くようになってきたけど、その動きはまだ自然な動きとは言えない。
「何年かかっても以前のように動きたい!」・・・これが脳梗塞になった直後からの私の願いであり、目標だ。何事も諦めたらそこで終わり。自分の回復力、脳の可塑性を信じてリハビリをし続ける事が私の最優先課題!それをもう一度頭に叩き込む為にこの長文を書いた。
この本の著者の山田規畝子氏はモヤモヤ病による脳虚血を2度起し、3度の脳出血を経験した人で整形外科医をしていた。後遺症である高次脳機能障害と付き合いながら息子さんと2人暮らしをしている。現在は医師を休業してTVや雑誌の取材を受けたり、講演や執筆活動をしてるそうだ。
脳梗塞を経験した自分にとっても、彼女が体験した事、彼女にしか見えない世界は不思議だった。彼女が「出来ない事を出来るようにする為にはどうしたらいいのか?」と自ら工夫して行ったリハビリ談は興味深い。
何よりも、幾度も修羅場をくぐり抜けて来た彼女の「普通の暮らしが最高のリハビリ」、「脳の回復には時間がかかる。2年も経てば普通の事が出来るようになる」、「壊れた脳でも必ず学習する。脳を一生懸命働かせれば必ずよくなる」といった脳卒中患者が前向きになれる文章がストレートに心に響き、大いに励まされた。私がやってきたことは間違ってなかったな、って。
昨日と今日を比べてどこがどう良くなったかと問われれば、よく分からない。でも「1ヶ月前より良くなってる気がするし、半年前と比べたらずっと動けている」と自信を持って言える。
そんなスローペースだけど左半身を徐々に動かせるようになっているのは、休む間もなく頑張って働いてくれる私の脳と体のお陰。有り難いことだ。
そして、ヘルパーさんのように根気強く私を助けてくれ、的確なアドバイスをくれる彼にも心から感謝!彼が常時在宅の身であって本当に助かっている。
さて、今年もあと半月ほどで終わり。
来年の私はどれだけ動けるようになっているのだろうか。
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↓医師が自分の体験した脳卒中について記した体験記は面白い。
医師故に自らの病状を客観的に分析する事が適切なリハビリへ繋がり、回復への近道になっているようだ。
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