2024年11月に出版された、6年ぶりの最新作 |
7月終わりから読み始めたM.W.クレイヴンの作品を一通り読み終えたので(最新作はまだ図書館にない)、今月中頃からは日本人作家の小説をぽつぽつ借りて読んでいる。
中でも原田宗典の小説、「おきざりにした悲しみは」は面白かった。春先にたまたまネットでこの作品についての記事を読んで興味を持ち、早速図書館に予約を入れたものの既に50数人待ちの状態だった。先日ようやく私の番が回って来て本を手にした。
物語のあらすじはこんな感じ↓
65歳の主人公、長坂誠は東京郊外で物流倉庫でのバイトをして日々をやり過ごしている。ある日、同じアパートに住む中学生の姉と小学生の弟と出会う。彼らの母親は半月ほど前に1万円だけ置いて家を出て行ったきり帰って来ず、電気や水道を止められた部屋で姉弟は困窮していた。長坂は親切心から彼らを自分の部屋に招き入れ、奇妙な共同生活が始まる。そんな中で長坂は自分の人生を振り返りつつ、少しずつ生きていく気力を得ていく。そして姉弟の人生にも大きな転機が訪れる・・・
恐らく長坂誠のモデルは作者自身。長坂には原田氏がこれまで体験して来た事が沢山詰まっているのだろう、妙なリアリティがある。重くなりがちなエピソードも原田氏らしいどこかユーモラスのある文で暗くなり過ぎず、時々くすっと笑いながらどんどん読めてしまう。物語の後半は思いもよらぬ出来事が続き、未来への希望を感じさせるエンディングで幕が下がる。
20云年ぶりに原田氏の小説を読んで、あぁこういう感じの文章だったなぁと懐かしく、素直に面白かった。人生にくたびれた人に元気を与えてくれるような作品。
<今月読んだ本>
・M.W.クレイヴン/ボタニストの殺人 下(原題:The Botanist)
・河合隼雄/こころの処方箋
・文學界 2025年8月号(雑誌)
・川手鮎子/心も体ももっと、ととのう薬膳の食卓365日
・M.W.クレイヴン/恐怖を失った男(原題:Fearless)
・原田マハ/異邦人(いりびと)
・谷川俊太郎/今日は昨日のつづき-どこからか言葉が
・原田宗典/おきざりにした悲しみは
・東京 暮しの手帖社/台所と暮らし
・レベッカ・ブラウン/体の贈り物(原題:The Gifts of the Body)
・イリナ・グリゴレ/みえないもの
・原田宗典/メメント・モリ
・ジョルジュ・シムノン/サン=フォリアン教会の首吊り男(原題:Le pendu de Saint‐Pholien)
・原田マハ/やっぱり食べに行こう。
0 件のコメント:
コメントを投稿